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アンティーク家具の豆知識

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ワードローブの豆知識

あなたの大切な場所、wordrobe

ワードローブという言葉、使ったことはなくても耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?その語源は古く、中世のヨーロッパで、王侯貴族の服飾品を保管していた場所が、この単語の起源となっています。

img_wordrobe00.jpg出典 https://www.etsy.com

ワードローブは、生活環境の中にファッションの為のスペースを確保し、楽しむ文化の基礎であり、自分の好きなものを大切に保存するという、日常の喜びをかなえてくれる場所でもあります。

長い歴史を通じて使われてきたこの言葉、今では洋服をしまう場所としてだけでなく、その人の持っている洋服全般や、ファッションの志向、スタイルそのものを指す言葉としても使われています。どんな人でも、その人なりのワードローブを持っているのです。

 

その起源と歴史について

さて、保管場所としてのワードローブは時代の変化とともに、様々に姿形を変えながら、人々の生活に根差してきました。

中世の時代、ワードローブはいわゆる押し入れのようなものとして登場します。この言葉は主に、寝室や階上室(お屋敷の中のプライベートな居住スペース)に直結する小部屋、およびロッカーのような戸棚を意味しました。

衣服の他に、宝石などのアクセサリーやお金など、大切な財産も鍵をかけて保管できたようです

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チェストタイプの家具に洋服をたたんでしまっていた時代から、より広い場所を装飾品の為に割り当てる、画期的な間取りが現れたのです。

年代ごとの構造に多少の変化はありますが、ワードローブはその後一貫して、優雅な装飾を施された王様のローブをしまう場所として発展してゆきます。

そして、イギリスでエドワード一世が誕生した1200年代に、独立した収納庫としての市民権を獲得するのです。

img_wordrobe02.jpg出典 https://www.tumblr.com

 

実際にはどんな家具が使われていたの?

ここで、ワードローブとして機能するタイプの家具を、幾つか挙げてゆきます。

チェスト

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ヨーロッパで生まれた様々な美しい家具の発祥ともいうべきチェストは、中世ヨーロッパ貴族階級の家庭家具として誕生し、ものを持ち運んだり、保存するといった、日常生活には欠かせない、基本的なアイテムでした。

最初は四方を釘止めして作った箱に蓋がついた簡素なものでしたが、次第に優雅な装飾が施されて、美しいデザインへと変化を遂げてゆきます。その代表とも言えるべきがカッソーネです。

img_wordrobe04.jpg出典 http://collections.vam.ac.uk

ルネサンスが花開いたヨーロッパでもっとも大切な家具といわれたカッソーネは、イタリア式婚礼用チェストで、結婚の贈り物としてとても重要なものでした。優美で華やかな装飾に、古きイタリア美術の傑出した輝きが見受けられます。
日常では、新居のベッドルーム、特にベッドの足元に置いて、簡易な椅子としても使用していたようです。

このようなシンプルな箱型チェストから発展して、引き出しのついた整理ダンスが生まれます。引き出しは比較的新しい発明品で、誕生とともに、小ぶりなチェストに引き出しが追加されたり、引き出し式整理箪笥の上部に鏡が取り付けられたりと、より幅広いデザインの収納家具が生まれます。

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フランス製猫脚の3段チェストです。明るくて優しい色合いに、曲線の美しいデザインが施された、とてもおしゃれな品です。木製の手作り家具だけがもつあたたかみを存分に感じることができます。

 

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こちらはイギリス製のドレッシングチェストです。上部鏡脚部分の飾り彫りも華美でなく、シックなセンスで非常に魅力的なチェストです。

 

クローゼット

王様のローブを美しい状態で保存するためには、洋服をかけて保管することが大切でした。刺繍などの装飾や、形の崩れを防ぐ為です。その名残をとどめているのが、日本でもおなじみのクローゼット、典型的な洋服ダンスです。

中にはハンガーをかけるための棒が横渡に設置されていて、衣類を立体的に収納できる優れものですね。

現在、特に欧米でワードローブと呼ばれて販売されている家具は、基本的にこのクローゼットタイプのものです。引き出しも幾つかついて、マルチな収納が可能な大型家具が一般的ですが、家内に据え付けのタイプもあり、そちらは伝統的なwordrobeにより近い形態かも知れません。

原語closetは、このタイプの家具を表すと同時に、物置や収納室といった、中に入ることのできる閉じられた小部屋、という意味を持ちます。収納というよりは、よりプライベートな空間そのものを指す言葉なのです。

壁面に備え付けのプライベートな小部屋、ということで、やはり大掛かりな家具です。

img_wordrobe05.jpg

 

まとめ

さて、ワードローブについて、その起源から種類までをざっとご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

ワードローブとは、自分だけの空間を指す、とても素敵な言葉だったのですね。好きなものを大切に保存するだけでなく、寝室というプライベートな場所で、より自分らしく過ごすことのできる、毎日を彩る存在です。

アルヴェールの家具も素敵な日常をお手伝い致します。